引きこもりでは得るものも失うものもありますが、失うものの1つとして「自信」が挙げられます。
もちろん、全員が自信を失うと言っているわけではありません。親御さんの対応が素晴らしくて、まわりに理解者が多く、環境にも恵まれているなら、引きこもりになっても自信を失わずに済むでしょう。
でも、それは、まれなケースです。
たいていの場合、引きこもりの子供は「引きこもっている自分」を否定的に見て、自信を失っています。
誤解のないよう強調しておきますが、失うと言っても“一時的に”失うだけで、引きこもり経験を経て「本物の自信」を手に入れることはよくあります。そういう意味では、失うものなのか得るものなのか、何とも言い難いところですが、一応、ここでは話を分かりやすくするために「失うもの」としておきましょう。
こういう話をすると、
「うちの子は妙に自信だけはあるんです。自信過剰と言ってもいいくらい…」
とおっしゃる親御さんが出てきます。
そういう親御さんには、
「それは『自信を失った自分』を認めることができず、幻想の世界で自信を得ているケースなんですよ」
とお伝えしています。
昔の私もそうでしたが、本当は引きこもっていることで自信を失っているのに、それを自分では認められなくて、「大丈夫、俺はスゴイんだ。俺は絶対将来ビッグになる」と言い聞かせている状態なんですよね。
自分で自分を洗脳しているようなものです。
ですから、それは“偽の自信”であって、本物の自信ではありません。
少し危険なケースとも言えるでしょう。
結局、自信があるように見えても、ないように見えても、どちらにしても、引きこもりの子供達は自信を失っているケースが多いのです。
そのため、必然的に、引きこもりの子供は「ある欲求」を渇望することになります。
その欲求とは…
「偉くなりたい」
引きこもりの子供は「偉くなれば自信を取り戻せる」と思い、偉くなることを渇望してしまうのです。
「偉くなりたい」という言葉がピンとこない方は、「スゴイと言われたい」という言葉に置き換えてもいいでしょう。
「スゴイと言われたい、スゴイと言われるようなことをすれば、スゴイと言われるような人間になれば、自信を取り戻せる」
そう、意識的もしくは無意識的に感じていて、偉くなりたい欲求を膨らませてしまっているのです。
このことを知っていると、親として何をしてあげたらいいか、よく分かりますよね?
答えは簡単。
子供の“成功体験”に気づいてあげて、「スゴイね!」「かっこいい」「尊敬するよ」「上手いね」…といった言葉をシャワーのように浴びせましょう。
なんだかんだ言っても、親の言葉は強烈です。赤の他人から言われると「お世辞だろうな」と思えることでも、親から言われると「本当かもな」と思えるものです。
上記のような言葉で「偉くなりたい」という欲求が満たされると、引きこもりの子供達は劇的に変わります。
引きこもりで失われた自信がよみがえり、元気を取り戻し、前に進むエネルギーが湧くので、突然、将来のプランを語り始めたり、表情が別人のように明るくなったりします。