ずっと前のことですが、あるとき、こんなことがありました。
ある相談者のお母さんの話を(いつものように)私はウンウンと聴いていたのですが、どうも話がワケが分からなくて「これ以上話を聴いていてもカウンセリングにならないな……」と感じたので、正直に伝えたのです。
「お母さん、話していただいているのは嬉しいんですが、話の内容がワケが分かりません」
と。
もちろん、こんなことを言うのはそのときが初めてでした。私はどんな話でも全て聴きたいと思っていましたのでそれまではどんな話でも無条件に聴いていました。
でも、そのときは私の気持ちが限界だったのです。全くワケが分からなくて、不快で、私のほうが参ってしまってカウンセリングにならないような感じでした。
それで、前述のように「話の内容が分からない」と伝えたのです。
これは、相談者の親御さんにとって衝撃だったらしく、ずいぶんと驚かれました。
「先生は何でも聴いてくれる」と思っていたんでしょうね。(実際、どんな話でも聴いていましたし)
ショックを与えてしまったので、「もう、おそらく連絡してこないだろうなぁ」と思っていたら、連絡してこないどころか喜ばれました。
「先生がああいうふうにおっしゃってくださったとき、本当に真剣に聴いてくれていることが分かったんです」
と。
よくよく考えてみれば、私も同じような経験があります。
引きこもりだった頃、カウンセリングのようなものを受けてきた母親が、一時期、私の話をよく聴いてくれるようになりました。それはそれで嬉しかったのですが、しばらくするとどうも嘘っぽく感じるのです。
「こんな話までウンウンと聴くか!?」とツッコミたくなるようなことが何度かあって、そのたびに「本当は話を聴いていないんじゃないか?」「なんか変なテクニック身につけてきて、そのテクニックだけで聴いているんじゃないか?」と思ったのです。
時が経ち、母親が以前のように「あんたの難しい話にはついていけない」と言ってきたときには、少しムカつきながらも安心する感覚がありました(笑)
私達は人間なので、やっぱり血の通ったものが大事なんですよね。特に、気持ち。自分自身の気持ちを大事にすることが、結果的に良い人間関係をはぐくむことになります。
子供のワケの分からない話を聴かされて不快に感じるときは、親御さん自身の気持ちを大事にして「ワケ分かんない」と正直に言ってみましょう。
「聴く」は大事ですが、それがテクニックだけになってしまうと「偽り」に映ります。
過ぎたるは及ばざるが如し。過度のテクニックは逆効果を招きます。テクニックと同じくらい親御さん自身の気持ちを大事にして、効果的な引きこもり対応の「聴く」を実行していきましょう。
Yuuichi Kimura / SIA Project
※SIA Projectでは、長年、不登校サポートを行なっています。不登校サポートの過程で有効だった引きこもり脱出ノウハウの一部をこのサイトでご紹介することにしました。不登校サポートでの実績をご覧になりたい方は下記のサイトをご覧ください。